研究概要

研究テーマ

近年の都市の過密化に伴う水需要の増大が原因となり、より効率的な水利用が求められています。一方、都市活動による水源水質の悪化や 汚染物質の多様化への対応も望まれています。当研究室では、水質汚染機構の解明、新しい浄水処理技術の開発、適切な水質指標の提案などを通じてより安全な 水環境を創出し、安定した水供給を実現することを目的とした幅広い研究を行っています。

アジアの都市水システム

アジアの都市は急速に発展し、人口の増加と産業の成長により水需要が増大しています。しかし、水源の汚濁や、水源開発の遅れなどにより水の供給が不足し、深刻な水不足に悩んでいます。そこで本研究室ではタイ、ベトナム、インドネシアなどの大学や研究機関と協力し、水供給における課題の解析や、水質問題による健康影響の評価、水質改善のための技術の開発、水管理や水供給の在り方についての提言などを行っています。

研究テーマ(例)

  • Integrated Study on Factors Affecting Water Quality of the Saigon River System in Vietnam
    (ベトナム国サイゴン川水系の水質に影響を及ぼす因子に関する統合的研究,2010年)
  •  Health Effects and Hydrogeology of Fluoride in the Chiang Mai Basin, Thailand
    (タイ国チェンマイ盆地における地下水中のフッ素とその健康影響,2008年)
  • IGroundwater Contamination and Its Effect on Water Supply in Hanoi City
    (ハノイ市における地下水汚染と水供給への影響に関する研究,2002年)

高度浄水処理(膜ろ過、ナノスケール吸着剤、紫外線処理など)

水の安全性や、良好な水環境を維持するためには、目的に応じた適切な水処理技術を活用することが重要です。現在使われている浄水処理方法は、長年の経験から安定した運転が可能となっていますが、新規の微量汚染物質への対応や、消毒複製生物の低減、さらにはエネルギー消費量の削減など新たな課題への取り組みが求められています。そのため、膜ろ過技術の開発や、新規の吸着材の開発、複数の処理を組み合わせたハイブリッド処理の検討など、新しい高度処理技術の開発を行っています。

研究テーマ(例)

都市水システムの計画および維持管理

我が国の都市水システムは1960年頃から2000年の約40年間に集中して建設されましたが、これらの施設はやがて更新時期を迎えます。また、地震など自然災害に対する備えを強化することも重要です。限られた資金をいかに有効に活用し、信頼性を高め、災害に強い都市水システムを構築するため、アセットマネジメントや水道料金制度の見直しなど、事業経営の視点から、都市水システムの計画と維持管理をとらえなおしています。

研究テーマ(例)

  • 千代田区における災害時の水需給と地下水の利用可能性(2009年)
  • ダクタイル水道管モルタルライニングの中性化による水質への影響(2007年)
  • Water Pipeline Rehabilitation Plannning Trough Pipeline Corrosion Models
    (管路腐食モデルを用いた水道管の更新計画,2005年)
  • 水供給システムにおける細胞周期因子を用いた細菌再増殖能の評価(2004年)  
  • システムダイナミクスモデルを用いた東京都の水需要と営業収支の検討(2004年)

気候変動による都市水システムへの影響

将来の気候変動は、地球上の生態系や物質循環に影響を引き起こすと考えられていますが、とくに水資源の量や分布に大きな影響を及ぼすと予測されています。水資源の量と質の変動は、都市の水供給を不安定化し、都市型の洪水を引き起こすなど、都市の水システムに甚大な影響を及ぼす可能性があります。そのため、将来の気候変動が引き起こす問題を予測し、それらの問題への適応策を検討しています。

研究テーマ(例)

  • 気候変動による沖縄の水供給への影響評価~SDモデルによる予測手法の開発~(2011年)